手紙
物心がついたときから、ひとりっきりだった。
お父さんもお母さんも兄弟もいたけど、私はひとりだったよ。
寂しかったし、人の輪を求めて仲間に入ろうと思ったけど、いつもうまくいかなかったんだ。
どうしてだろう?私もみんなと一緒に遊びたい。仲良くしたい。
でもいつもうまく仲良くなれなかった。
お母さんはいつも私に言ったね。
「弟は本当に優しくて良い子だ」
「どうして弟のように出来ないんだ」と。
優しいってどんなことだろう。
どうしたら私もそんな風に褒めてもらえるの?
布団に入るときには、いつもそれを考えたけど、「お皿を割らない」事しか思いつかなかった。
そんな頭の足りない子だったからきっと子育ても大変だったよね。
「お前は人の気持ちがわからない人間だ」と言われても、さっぱりわからなかったんだもん。
お母さん
お母さん
私、「普通」になるために頑張ったよ。
たくさんの人を傷付けて、傷付けられて、裏切ったり、裏切られたり、最低な事もした。でもだから、人の気持ちも考えられるようになれたかなと思う。
いまにして、こんなに人を傷付けて生きてきた事を悔やんでいるけれども。彼らが幸せに暮らしてるといいな、と祈る事で懺悔としているんだ。
今、私の周りにいる人たちは、私が「変わった子」だからといって詰ったりしないし、「別の誰か」のように振る舞うことを強要したりしないので、とても楽しく生活しています。
12時間も呪いの言葉を吐かれる事もないし、過呼吸と蕁麻疹になってしまっても「都合の良い病気」なんて言ったりしないんだよ。
そういう人達に囲まれて少しづつだけど、私は私のままで生きて良いんだって知ったの。
そのうちに、私は自分で道を選んで、進む事を覚えたよ。
自分の選択には責任を持って生きていくことを知ったの。
だから、お母さんとはお別れすることにしました。
私の大切なものを守るために。
いつものようにお友達に愚痴ってもらって構いません。
「私はこんなに娘に虐げられている」と。
あなたの思い通りの人形になれなくてごめんね。
でも、もう人形はひとりいるからいいでしょう?
きっと私の決断は世の多数から非難されるし、いつか後悔するかもしれないけど、その後悔も受け入れて生きて行くつもりだよ。
どうか周りにこれ以上迷惑をかけずに、せいぜい長生きして下さい。
産んでくれてありがとう。
さようなら